「フリーランスになったら健康保険はどうなるの?」
そもそも保険は、
「めったに起きないが、起きたときに生活が崩れるリスク」に備えるものです。
フリーランスになると、このリスクを自分で引き受けることになります。
フリーランスにとって健康保険が重要な理由もまさにここにあります。
重病や入院といった事態は頻繁には起きませんが、いざ起きると数百万円規模の医療費が発生しながら収入も止まるという二重のダメージになります。
月数万円の保険料を「高い」と感じるより「万が一への備え」として捉えることがフリーランスとして長く働き続けるためのリスク管理の基本です。
会社員からフリーランスへの転身を考えたとき、多くの人がぶつかる不安のひとつです。会社員のうちは会社が保険料を半分負担してくれていましたが、フリーランスになると全額自己負担になります。手続きを知らずにいると無保険状態になるリスクもあるため、早めに把握しておくことが重要です。
この記事では、フリーランスが選べる健康保険の4つの選択肢と、保険料をできるだけ抑えるポイントを解説します。退職前に読んでおくと、独立後の手続きで慌てずに済みます。
この記事でわかること
・フリーランスが選べる健康保険の4つの選択肢
・国民健康保険と任意継続、どちらが安いか
・退職後の手続き期限と必要書類
・保険料を抑えるための具体的な方法
フリーランスの健康保険は自分で選ぶ必要がある
会社員のうちは会社が手続きをしてくれていた健康保険も、フリーランスになると自分で選んで加入手続きをしなければなりません。退職日の翌日から健康保険の資格を失うため、手続きを放置すると無保険状態になり、医療費が全額自己負担(10割負担)になるリスクがあります。
また、手続きが遅れた場合でも無保険期間分の保険料は遡って請求されます。退職後は速やかに手続きを進めることが大切です。
フリーランスが選べる健康保険は主に4つあります。
フリーランスが選べる健康保険4つの選択肢
① 国民健康保険に加入する
最もオーソドックスな選択肢です。住んでいる市区町村が運営する公的医療保険で、フリーランス・自営業者の多くが加入しています。
手続き期限:退職日の翌日から14日以内
手続き場所:住所地の市区町村役場
必要書類:
・健康保険資格喪失証明書(会社から発行)
・マイナンバーカードまたは本人確認書類
保険料の特徴:
・前年の所得をもとに計算される
・家族がいる場合は人数分の保険料がかかる(扶養制度なし)
・自治体によって保険料が異なる
・退職直後は前年の収入が高いと保険料が高額になりやすい
独立初年度は前年の会社員時代の収入をもとに計算されるため、保険料が高くなりがちです。収入が大幅に減る場合は、自治体の減額・免除制度を申請できる場合もあります。
② 前職の健康保険を任意継続する
退職前に加入していた会社の健康保険を、退職後も最長2年間継続できる制度です。
手続き期限:退職日の翌日から20日以内
手続き場所:加入していた健康保険組合または協会けんぽの支部
必要書類:
・任意継続被保険者資格取得申出書
保険料の特徴:
・退職時の標準報酬月額をもとに計算
・会社員時代の約2倍になる(会社負担分がなくなるため)
・ただし上限額があるため、高所得だった場合は国保より安くなる可能性がある
・扶養家族がいる場合は家族分の保険料が不要
注意点:
・支払いが1日でも遅れると自動的に脱退になる場合がある
・自己都合での途中脱退は原則できない
・最長2年が経過したら国民健康保険に切り替えが必要
③ 家族の扶養に入る
収入が少ない場合、配偶者や親など家族の健康保険の扶養に入る方法があります。
加入条件:
・年間収入(見込み)が130万円未満であること
・60歳以上または障害年金受給者の場合は180万円未満
保険料の特徴:
・自分の保険料負担がゼロになる
・フリーランス初期で収入が少ない時期に特に有効
注意点:
・収入が130万円を超えると扶養から外れる必要がある
・フリーランスとして収入が増えてきたら別の選択肢に切り替えが必要
④ 国民健康保険組合に加入する
特定の職種・業種に従事する人向けの健康保険組合です。通常の国民健康保険とは異なる保険料体系で、所得に関係なく一定の保険料で加入できる場合があります。
対象となる職種の例:
・フリーランスのライター・デザイナー → 文芸美術国民健康保険組合
・IT・エンジニア系 → 該当する組合を要確認
・建設業 → 建設国保など
保険料の特徴:
・所得に関係なく固定料金の場合が多い
・高所得の場合は国民健康保険より保険料を大幅に抑えられる可能性がある
注意点:
・加入できる職種・業種が限られている
・加入条件や保険料は組合によって異なる
・まず自分の職種に対応した組合があるか調べることが必要
国民健康保険と任意継続、どちらが安いか
どちらが安くなるかは、退職時の収入・家族構成・お住まいの地域によって異なります。一般的な目安は以下の通りです。
| 国民健康保険 | 任意継続 | |
| 保険料の計算基準 | 前年の所得 | 退職時の標準報酬月額 |
| 扶養制度 | なし(家族分も必要) | あり(家族分不要) |
| 加入期間の上限 | なし | 最長2年間 |
| 高所得だった場合 | 高額になりやすい | 上限があるため有利な場合も |
| 低所得・収入減の場合 | 減額制度あり | 減額なし |
| 途中脱退 | 自由 | 原則できない |
判断のポイントは以下の通りです。
・退職前の収入が高く、扶養家族がいる場合 → 任意継続が有利な可能性
・退職後の収入が大幅に減る見込みの場合 → 国民健康保険+減額申請が有利な可能性
・家族の扶養に入れる場合 → 扶養が最もコストを抑えられる
どちらが安いか迷った場合は、市区町村の窓口や健康保険組合に相談すると試算してもらえます。
退職後の手続きスケジュール
退職後はやることが多く、健康保険の手続きを後回しにしがちです。期限を把握して早めに動くことが大切です。
| 期限 | やること |
| 退職日当日〜翌日 | 会社から健康保険資格喪失証明書を受け取る |
| 退職後14日以内 | 国民健康保険の加入手続き(役場) |
| 退職後20日以内 | 任意継続の申請(希望する場合) |
| 退職後14日以内 | 国民年金への切り替え手続き(役場) |
| 退職後1ヶ月以内 | 開業届・青色申告承認申請書の提出 |
青色申告承認申請書の提出方法・フリーランスの確定申告はこちら
保険料を抑えるための3つのポイント
① 国民健康保険料の軽減・減免制度を活用する
退職して収入が大幅に減った場合、市区町村に申請することで国民健康保険料を軽減・減額してもらえる制度があります。特に会社都合退職(リストラ・倒産など)の場合は、前年の給与所得を30%とみなして保険料を計算する「非自発的失業者の軽減制度」が使えます。
自己都合退職でも、一定の所得基準を満たせば軽減制度を利用できる場合があります。住んでいる市区町村の窓口に相談してみてください。
② 保険料は確定申告で経費として控除できる
国民健康保険料と国民年金保険料は「社会保険料控除」として確定申告で所得控除の対象になります。支払った保険料を証明する書類は必ず保管しておいてください。
③ 会計ソフトで収支を把握して保険料の見通しを立てる
国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるため、今年の収入が来年の保険料に影響します。日々の収支を会計ソフトで管理しておくことで、翌年の保険料の見通しが立てやすくなります。
よくある質問
Q. 健康保険に加入しないとどうなりますか?
日本では国民皆保険制度により、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する義務があります。加入しなかった場合でも遡って保険料を請求されるうえ、無保険期間中の医療費は全額自己負担になります。退職後は速やかに手続きを行ってください。
Q. 任意継続から途中で国民健康保険に切り替えられますか?
原則として任意継続は自己都合での途中脱退ができません。ただし保険料を滞納すると自動的に脱退となります。意図的に滞納することで切り替える方法もありますが、延滞リスクがあるため注意が必要です。なお、2022年の法改正により、任意継続中に国民健康保険に切り替えを希望する旨を申し出れば脱退できるようになりました。加入している健康保険組合に確認してください。
Q. フリーランスでも健康診断は受けられますか?
フリーランスは会社が費用を負担する健康診断がなくなります。国民健康保険に加入している場合、自治体が実施する特定健診(40歳以上対象)を受けることができます。また、自費で人間ドックや健康診断を受けた場合、その費用は経費として計上できる場合があります。
まとめ
フリーランスの健康保険の選択肢をまとめます。
・① 国民健康保険 → 退職後14日以内に手続き。収入が少ない場合は減額制度も活用
・② 任意継続 → 退職後20日以内に申請。扶養家族がいる場合に有利な場合も
・③ 家族の扶養 → 年収130万円未満が条件。保険料負担ゼロが最大のメリット
・④ 国民健康保険組合 → 職種によっては保険料を大幅に抑えられる可能性あり
どの選択肢が最適かは収入・家族構成・職種によって異なります。迷った場合は市区町村の窓口や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
フリーランスとして独立する際は、健康保険だけでなく確定申告・会計ソフトの準備も早めに進めておくと安心です。
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※本記事の情報は2026年3月末時点のものです。保険料・制度の詳細は変更される場合があります。最新情報はお住まいの市区町村や加入する健康保険組合にご確認ください。個別の判断については専門家(社会保険労務士等)にご相談ください。

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